【なつかしい記事】介護が必要な老人ホームに日本人高齢者も入居中
老後をタイで過ごすのは元気なうちは良いですが、健康上の理由で、日本へ帰国する人もいます。しかし日本に帰る場所がなく、タイに骨を埋める覚悟を決めている日本人高齢者も多く、将来自分が介護が必要になった時のことを考えると不安という声が多く聞かれます。
また高齢の親をタイに呼び寄せた後に、プロの介護が必要になるケースもあり、在タイ日本人の介護への関心は高まっています。
京都大学医学部卒のバンコク病院のレヌー先生は、患者の中に行き場所のない高齢者が多く、なにか自分に出来ないものかと8年前にエルダリー・ケア・ナーシング。ホーム(Elderly Care Nursing home)をスタートしました。
私費で始めた慈善事業的な施設ですが、正式な病院として承認されており、全部で30床で現在日本人3人を含む22人の高齢者がここで過ごしています。欧米人も居た事があるそうです。
先日、ホームを見学させてもらいました。場所はドンムアン空港に近いパホンヨーティン通りソイ69で、すぐ近くに大きなセントラル・ジェネラル・ホスピタルがあり緊急の際に利用できます。
コンパクトな5階建ての建物は、以前は病院だったそうで、診察室や受付などにその名残が感じられました。
2階の男性用相部屋には9人、3階の女性用相部屋には11人入っていました。個室は4階にあります。入居者はアルツハイマー、末期ガン患者などで、訪れた時は、ほとんどの方が寝ていましたが、介護士の方々は、忙しそうでした。12人の介護士が2交代制で24時間介護にあたっています。
建物自体は古いですが、隅々までしっかり管理が行き届いている印象で、リハビリ運動が出来る部屋、キャンティーンもあり、料金は食事など込みで1ヶ月相部屋で3万バーツ台、個室で4万バーツ台。タイで働くある日本人の親が寝たきりで入居しており、日本人にとって費用が手頃でケアも行き届いているので、安心して預けられるといいます。
核家族化が進むタイでは、民間の介護老人ホームが増えていて、月1万バーツ程の所もありますが、医療のプロでないため問題が多く、特に合併症が多いそうです。このホームに入居しているのは、24時間介護の必要な老人ですが、レヌー先生は他の医師とともに次のプロジェクトとして、そこまで介護が必要でないロングステイヤー向けの老人ホームの建設を進めています。
ラマ9世通りとシーナカリン通りの交差する付近に、3ライの敷地を確保しており、現在申請中でいくつかの法的な問題をクリアし、来年中の完成を目指しています。介護だけの老人ホームではなく、入居者が活動を通して生きがいを感じられるような施設にしたいとのことで、タイにはまだない新しいコンセプトの施設を構想中です。
最初の建物は5階建て50床を予定しており、その他に敷地内にいくつかの施設が予定されていて、日本人入居者が多ければ、日本人専用のフロアーなど日本人向けサービスも考えられるようです。細部はこれから決めていくそうですが、多くの日本人ロングステイヤーが興味を示すのではないでしょうか。
旅行を楽しんでいるという日本通のレヌー先生ですが、日本との最初の縁は、友達に誘われて日本の奨学金留学生の試験を受けたことがきっかけだったそうです。
医学生だったレヌー先生は、試験はうんざりでしたが、友達にどうしても一人では心細いので一緒に受けて欲しいと頼まれて受けたそうです。結果はレヌー先生が受かり、友達は落ちてしまったそうで、人生何がきっかけになるかわからないものです。
「今年で60歳になるので、やりたいことは、急いでやらないといけませんね」と冗談交じりに話すレヌー先生ですが、大変若々しく活動的で、バンコク在住の日本人にとって心強い存在です。新しい老人ホームが成功したら、さらに他の場所でも展開したいといいます。
今後、急速に進むと予測されるタイの高齢化社会を見据えたモデル・プロジェクトとしての長期的なビジョンもあるようです。
2015年3月5日 タイ自由ランド掲載