【なつかしい記事】ナコンサワンで日本米を作る日本人
タイに次々と進出する日本料理店により、我々、在タイの日本人も日本食を食べる機会が多いが、日本料理で重要なのは日本米。これがおろそかになればがっかりするし、タイだからといっておろそかにしてはいけない点でもある。
タイでは20年以上前からチェンライなどタイ北部で、日本米が作られており、その日本米がバンコクにある日本料理店や、在タイ日本人向けのスーパーなどで販売されている。
バンコクで日本料理店を10年以上、経営する店主によると、「一時期、品質が悪いと騒がれたことはあったが、今は安定していると思う。自分は日本人の業者からは高くて買えないので、タイ人の業者から1キロ48バーツで買っている。つぶが少し小さいけど、炊き方などを工夫して、おいしく仕上がるように努力している」と話す。
ところで、バンコクは相変わらず日本料理ブームで、日本米の需要は多い。価格も徐々に上がっており、高級なもので1キロ70~80バーツで卸されており「この値段ではやっていけない」という店舗オーナーの声も聞かれる。
そんななか、ある志を掲げて「おいしい日本米を安くで提供したい」と話す日本人がいる。安田修三さん、73歳。すでに在タイは20年以上になるベテランで、数々のプロジェクトを立ち上げてきて、そのアイデアは、あの都知事立候補者のドクター中松のようでもある。
今回、安田さんは「ナコンサワン県のチュムセーンというところで、日本米をつくり、今後、バンコクで安くておいしい日本米を安定供給する」と奮闘している。
タイでは口だけの人は多いから、この目で見てみなくては、ということで、実際にそのチュムセーンにおもむいた。
バンコクから、アユタヤ、アントン、シンブリーを通り、ナコンサワンに入るまで2時間半ほど。またそこから、チュムセーンまで20分ほど。泊りがけで日本米の町おこしに取り組む安田さんの案内で、すでに試験的に日本米を作っている農家を案内してもらった。
「この地域は9~11月に洪水になりますが、水が豊富で、よい地下水がある。バンコクからも近く、タイ北部のチェンライやチェンマイで作るよりも、メリットがあります」と説く。
安田さんによると、タイでの日本米の生産は、タイ米のホームマリに左右されることが多いという。チェンライでは以前から、高くで買い取ってもらえる日本米を生産していたが、タイ米の高級ホームマリも1トン15000バーツほどになり、農家がそれに乗り換えた。卸業者らは日本米の不足分を、ベトナムなどからの日本米で補い、混合して提供するなどして、急場をしのぐ状況という。
「やはり、タイにある日本料理店では、地元で採れたおいしい日本米で、ごはんを炊いてもらいたい。それが私の願いです」と安田さんは志を語る。
バンコクの日本料理店主によると「本当?ベトナムの日本米が混ざっているの?同じジャポニカ米だからそこまで見分けるのは難しいけどね」とそれほど関心を示さない。
それをよそに安田さんは、この8月には500ライ~600ライで収穫し、まずバンコクの日本料理店などに卸すという。続いて、そのあと3000ライほどを見込んでいる。店への卸価格は1キロ35 ~40バーツを目ざし、それを安定供給する。
作り手であるチュムセーンの農家らはまだ半信半疑だが、安田さんの熱心な呼びかけで、100ライ、200ライと日本米に移行する人もおり、基本的には1トン5000バーツで買い取るタイ米より、1トン10000バーツで買い取る日本米への変更を決断するという格好だ。
しかし、日本米の生産はそれほど簡単ではない。そのため、安田さんらのチームがつきっきりで指導しており、ナコンサワン県で初めての日本米がバンコクにお目見えする日は刻々と近づいている。
なお、安田さんへの連絡先は、電話087-110-0909まで。
2014年5月20日 タイ自由ランド掲載