西野順治郎列伝 127 第13章 – 1 日・タイ四百年史



西野さんが著書の『日・タイ四百年史』は、1973年5月(昭和48年)に初版が発行され、その4年後に新版が、さらにその6年後の1984年に新版増補版として発行されています。
つまり、この約10年間で2回の改訂版が発行されたことになります。
これは、西野さんが本の内容に強いこだわりを持った表れといえます。
過剰な表現が許されるなら、この本は、日本とタイの関係を振り返る際の「歴史的教本」となりつつあると言っても過言ではありません。
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本の内容は、タイトル通り、日本とタイの関係に基づいた歴史的事実をもとに描かれています。
具体的には、アユタヤ王朝から始まり、バンコク王朝、そして現在の王朝に至る歴史的経緯の中で、日本とタイとの関係が記述されています。
特に、政治的分野での記述が多く見られます。
この本は、日本とタイとの「架け橋」となることを目指して執筆されたものであり、西野さんの広範な知識と経験に裏付けられています。
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この本が発行されるに至った経緯は、西野さんが日本人会の編集責任者と活動していたことに端を発します。
当時、西野さんは日本人会の会報誌、月刊「クルンテープ」の編集責任者を務めており、一年前から「日タイ関係の歴史」というタイトルで同誌に連載を開始しました。(全36回)
西野さんは「原稿が集まらない場合に備え、予備の原稿としてタイの現代史を少しずつ書き、準備していた」と述べており、後世に歴史的事実を残そうとする意図が感じられます。
実際、原稿が不足した際には、埋め草として「クルンテープ」誌に掲載し、紙面の体裁を整えていました。
しかし、それはあくまでも「埋め草的な」ものでした。
そんな記事を何回か掲載しているうちに、当時の時事通信社バンコク特派員であった今里 仁記者から「内容がわかりやすい。本にして発行したらどうですか」とのコメントをいただきました。
この言葉がきっかけとなり、『日・タイ四百年史』の出版に至ったそうです。
西野さんは生前、この話を著者に語っていました。
とはいえ、たとえ時事通信社の特派員から話を持ち込まれなかったとしても、何らかの形で歴史に残そうという意思を持ち続けていたことでしょう。
こうして時事通信社が発行元となり、本は出版されました。
なお、本の本扉には「奉安塔」が掲載されています。この塔には、明治33年にタイ国王より日本国民への贈り物として下賜された釈迦御真骨が安置されています(名古屋市千種区)。
(次回号に続く
2025年12月5日 タイ自由ランド掲載


















