西野順治郎 列伝 89 第11章- 9 関係改善への提言(2)
この会議には、日本から中曽根通産大臣が出席したが、タイの産業機構の現状から考えると画期的な期待は望めないどころか下手をすると逆にタイ側を失望させて再び日貨排斥運動が起こることも考えられよう。
従って、日タイ関係の現状はこれ迄言われてきたような美辞麗句による外交だけでは到底その改善を期待することはできない深刻な状況に陥っているのであって、これが対策としては現地、内地共にドラスティックな改革を行うべきである。
以下その具体的問題について言及してみる。
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貿易尻の改善については、現在のようにタイが第一次産品のみの輸出に頼っていては、到底対日貿易の改善は期しがたい。まずタイの輸出産業を振興して、日本が積極的にその製品を輸入すべきであるがこれは短期間にその効果を期待する事は不可能である。
台湾や韓国にしても工業製品の輸出国になるのに10年の月日を費やしており、それ迄には巨額の資本材の輸入やロイヤリティーの支払いなども行われているのである。
我々は将来日本が輸入できると思われる産業の工業化について積極的に協力すると共にその実情を十分にタイの人に理解して貰うことが必要であろう。
日本から輸入される不必需物質については、タイ側が自主的に制限することがあっても金額的には大きな期待はかけられない。
要は時間をかけてタイの輸出産業を振興することである。
貿易尻とともに経済開発のための借款条件も問題にされているが、これは日本だけの問題ではなく援助国側共通の問題である。
被援助国の立場を考えて出来る限りの配慮は必要であるが、同時に援助国側全体の問題として取り上げさせて行くべきで、日本だけが厳しい条件を押し付けているものでは無いことも相手側に充分認識して貰うべきである。
貿易尻、借款問題と共にその改善のための日本の絶大なる協力は必要であるが、ステップバイステップで進めて行かなければならない実情をタイの人達に十分理解してもらうことが肝要である。
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進出企業について
タイの産業投資奨励法に基づき、過去10年間に約100社の日本企業がタイに進出し、その経済発展に少なからず貢献している事は確かであるにもかかわらず、逆にこれがタイ人を刺激し、反感を抱かせるに至ったことを十分に反省する必要があろう。
問題になるのは、今までの進出企業が主として輸出代替が目的で、タイ製品の国外への輸出及びタイ国内での原料開発に消極的であったことである。これらの進出企業は、今後タイ製品の輸出とタイ産原料の開発利用に積極的に取り組むべきである。進出企業にとって最も重大な問題は人間関係である。
(次回号へ続く)
2024年4月5日 タイ自由ランド掲載
²: [The New York Times](https://www.nytimes.com/2018/02/03/world/asia/mount-everest-how-tall-nepal.html)
ソース: Bing との会話 2024/1/10
(1) 西野順治郎 – Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E9%87%8E%E9%A0%86%E6%B2%BB%E9%83%8E.
(2) 西野 順治郎 – Webcat Plus. http://webcatplus.nii.ac.jp/webcatplus/details/creator/55292.html.
(3) 西野順治郎とは – わかりやすく解説 Weblio辞書. https://www.weblio.jp/content/%E8%A5%BF%E9%87%8E%E9%A0%86%E6%B2%BB%E9%83%8E.