第9章-6 特別編 西野順治郎 列伝75回 西野さんの座右の書「シャム」

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西野さんは、戦前大使館勤務を始めた頃この書を愛用した事でしょう。
これから、その本について紹介して行きます。

現在のように情報があふれている時代とは違って、当時情報入手は困難な時代で唯一この本のみでした。

いわば、タイに関するバイブル本で、その名前は、「シャム」という僅か2文字半という短いタイトルです。

この本は、A5版で計630ページ、厚さは4センチほどです。

内容は、全ての分野について書かれており、タイに関する入門書になっています。

つまり、この1冊の本でタイに関する全ての事を広く浅く、理解することができます。西野さんがこの本にお世話になった事は、想像に難くないでしょう。
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この本は、満鉄東亜経済調査局が著作者となっており、昭和13年7月30日印刷納本、同18年5月1日に再販発行されています。

満鉄は、1906年（明治39年）に発足し、翌年満鉄調査部が設置されています。

当初は、中国東北部の政治、経済地誌などの基礎等調査研究を行いましたが、その後拡大されて中国全土はもとより南洋、タイ、ミヤンマ―地域にも及んでいます。

この本は、全4巻シリーズの中、シャムは第4巻として出版されています。
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シャムの説明
1938年に首相となったピブン氏は、世界情勢が厳しくなる中、近代的主権国家の樹立を目ざし、またタイ人の国家である自覚を国民に求めるため、1939年10月3日に国号をシャムからタイに変更しました。

ちなみに、タイ人は「サヤーム」と呼んでいました。

この時、西野さんはタマサート大学でタイ語を学んでいます。
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この本の中で、「シャム人の国民性」として書かれていますが、現在と比較理解する意味で貴重な記述なので、紹介します。

なお、読みやすいように一部修正しました。

「以上、シャム人の国民性を通観するに、最も救いがたい欠点は、営利計数の念に薄い点で、今日為政者が真摯に要望する実質的な独立自主の完成に当り、最大の障害をなしている。

之が排除は、国民教育の普及徹底に待つ他はあるまい。

ただし、これを償ってなお余りある美点（良い点）は、独立自由の愛国心が伝統的に熾烈（しれつ）である特質であろう。

過去に於いてシャム人は、これが擁護の為には、その欠点とするあらゆる国民性を忘れたかの如く、驚異的な勤勉さと克己と忍耐と努力を示して来た。
シャム人は、近時、この国民的誇りの為に戦いを開始している。

この戦いの将来にも、過去に於けるが如き異常なる現象が呈出（ていしゅつ）（注:状況を示す）されることと期待せずにはいられない。」

まさに、正鵠（せいこく）を得た一節ですね。
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余談:西野さんの記事を書くためタイ国立図書館に行って、日本語の本を探した所、偶然にもこの本に遭遇しました。まさに瓢箪（ひょうたん）から駒ですね。

（次回号へ続く）

 2023年9月5日 タイ自由ランド掲載