西野順治郎 列伝 87 生前の足跡第11章- 7 田中角栄首相のタイ訪問 （4）
周到に準備
以下、余り知られていない裏話を紹介しましょう。
田中首相のタイ訪問については、その半年前頃から立案されていました。
成功裏に訪問を終わらせたいという考えから、藤崎万里大使以下が協力し、周到な準備が進められて来ました。
特に、訪問の1ヵ月前には館員に長期休暇を自粛させ、その期間を準備に充てさせました。
また、活発な学生運動に対しても、対策を話し合い、タイ当局にお願いする形となりました。
この過程で、西野さんの協力が不可欠であると認識され、西野さんに呼びかけが始まりました。
西野さんは、貿易不均衡の解消を目指して経済団体との協議の場を提案し、それが了承されました。
こうして実現したのが、田中首相のタイ訪問前に開催された「日タイ貿易会議」で、この会議により産業界との深い関係が築かれました。
大使館としては官の立場であり、直接的な協議の場を設定できなかったため、西野さんの協力が不可欠でした。
なお、この時西野さんはJCCの役員で前例のない無役職の筆頭理事という役職に就いていました。
× × × ×
西野さんは田中首相のタイ訪問の全日程を、藤崎大使の秘書役として動き、首相の質問に対しても直接答える場面がありました。
当初は学生との対話は計画に含まれていませんでしたが、突然田中首相は「少数の代表とも会っても良い」と提案しました。
これに対して、藤崎大使は驚きながらもその準備を指示しました。
しかし、宿舎であるエラワンホテルは「急に言われても準備ができないし、会見用の部屋は空いていない」という回答がありました。途方にくれた藤崎大使の前で、西野さんは次の提案をしました。
「隣のアマリンホテルなら空いているので、その支配人に連絡を取ってみます」と発言し、それが了解されました。
アマリンホテルの松田嘉久支配人に連絡を取り、会見の場が設けられることになりました。（注:松田嘉久支配人については、別に紹介します）
なお、アマリンホテルは首相の宿舎のエラワンホテルの裏側にあり、小さな通路があり人のみが通行できる「抜け穴」が存在しました。
なお、このアマリンホテルは後になって、アマリンブラザー、そごう百貨店が建設されてオープンすることになります。
この計らいによって、首相と10名の学生代表による会見が実現し、双方の立場の理解がより深まりました。
その内容は、西野さんの記述通りです。
ここでも、西野さんはその機敏な行動により高い評価を受けました。
こんな裏話があるにもかかわらず自慢せず、聞かれない事は答えないという西野さんの控えめな性格もうかがえます。
今回で、田中角栄首相のタイ訪問に関する話は完結します。
（次回号へ続く）
著者へのメール:kobayashiyu99@gmail.com
2024年3月5日 タイ自由ランド掲載
この記事を読んで、裏で支える人々の努力がどれほど重要かがよくわかりました。西野さんのような行動力と謙虚さを兼ね備えた人物がいることで、大きな歴史的瞬間が成り立つのですね。田中首相のタイ訪問の成功には多くの人の献身があったという事実に敬意を表します。 #田中角栄 #タイ訪問 #国際関係 #裏話
²: [The New York Times]（https://www.nytimes.com/2018/02/03/world/asia/mount-everest-how-tall-nepal.html）
ソース: Bing との会話 2024/1/10
（1） 西野順治郎 – Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E9%87%8E%E9%A0%86%E6%B2%BB%E9%83%8E.
（2） 西野 順治郎 – Webcat Plus. http://webcatplus.nii.ac.jp/webcatplus/details/creator/55292.html.
（3） 西野順治郎とは – わかりやすく解説 Weblio辞書. https://www.weblio.jp/content/%E8%A5%BF%E9%87%8E%E9%A0%86%E6%B2%BB%E9%83%8E.