タイ最新ニュース 2025年7月30日

タイとカンボジア、停戦合意後の国境緊張
両国軍幹部が協議、攻撃停止や兵士の移動停止などで新たに合意
停戦合意とその後の展開
タイとカンボジアの両国は、7月28日にマレーシアの仲介で無条件の即時停戦に合意し、29日午前0時から停戦が発効した。これを受け29日、国境地帯の戦闘地域を管轄する両国軍部隊の幹部による協議が行われ、新たな合意に達した。
新たな合意の主な内容
- 双方が互いに攻撃を停止すること
- 部隊の増強や兵士の移動を停止すること
- 住民に対する攻撃を禁止すること
- 死亡・負傷した兵士の移送を進めること
- 両国軍部隊間で調整チームを設置し、紛争再発防止に取り組むこと
しかし、停戦発効後も複数の場所で攻撃が続いているとの情報があり、タイのプームタム首相代行はカンボジア側が合意に違反していると非難。一方、カンボジアの国防相はこれを否定している。緊張緩和につながるかが焦点となっている。
「非常に有意義な会談が開かれ、即時停戦のための良い結果が得られた」
—カンボジア フン・マネット首相
紛争の背景
タイとカンボジアの国境紛争は長い歴史を持ち、その根源は19世紀末~20世紀初頭の植民地時代に遡る。現在の対立は主に以下の要因が絡んでいる:
植民地時代の国境画定
19世紀末、フランス(当時のカンボジア宗主国)とタイ(当時のシャム王国)の間で作成された地図が現在の国境紛争の原因となっている。特に1907年にフランスが作成した地図は、両国間の領有権問題の根源となっている。
プレアビヒア寺院遺跡の帰属問題
2008年にプレアビヒア寺院遺跡がユネスコの世界遺産に登録されたことをきっかけに、周辺地域の領有権をめぐる対立が再燃。2011年には両軍の銃撃戦が発生し、複数の死傷者が出る事態となった。
今回の衝突の発端
2025年5月にタイ・カンボジア国境付近で銃撃戦が発生し、カンボジア兵1名が死亡。7月23日にはタイの国境警備隊の兵士5人が地雷を踏んで重傷を負う事件が発生し、翌24日から武力衝突が激化した。
政治的背景
タイのタクシン元首相の娘であるペートンタン首相とカンボジアのフン・セン前首相の関係悪化も、両国関係に影響を与えている要因の一つとされる。
被害状況と避難民
今回の紛争では、両国合わせて30人以上が死亡し、約30万人が避難生活を余儀なくされている。タイ側では民間人11人と兵士1人の死亡が確認されている。
避難所の声
“半分怖い。まだあまり(停戦の)確信持っていない。"
“まだ確信できないが、帰る必要がある。"
国境地帯では帰宅する避難者の姿も見られるが、戦闘が続く不安から多くの人が避難を続けている状況だ。
その他の関連ニュース
銀行協会、軍事衝突と洪水被害者への救済策を発表
タイ銀行協会(TBA)は28日、タイ・カンボジア間の軍事衝突と北部の洪水で被害を受けた国民に対し、救済策を発表。加盟銀行による支援プログラムを実施する。
パタヤのコンドミニアムで外国人2人が相次いで死亡
7月17日、東部チョンブリー県パタヤ市のコンドミニアムで外国人男性2人の遺体が発見された。警察は「両事件に共通点はない」と発表しているが、調査を継続中。
今後の展望
両国の停戦合意とその後の軍幹部間の協議は、緊張緩和の第一歩となる可能性がある。しかし、長年にわたる領土問題の解決には時間がかかると見られている。
8月4日には、カンボジア主催のタイ・カンボジア総合国境委員会(General Border Committee:GBC)による協議が予定されており、さらなる対話の進展が期待される。
両国の関係改善と国境地帯の安定が、東南アジア地域全体の平和と安定につながるかが今後の焦点となる。

















