翻訳したトムヤンティ女史の 「メナムの残照」②、西野順治郎列伝 ⑧

小説「メナムの残照」の表紙

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小説の話になりますが、タイで何度もドラマ化や映画化されてきた作品です。
 

小さい子供を除いて、この作品を知らないタイ人はいないといっても過言ではありません。
 

また、日本人の間でも、自己紹介する際に、「小堀です。私のアンスマリンを探しています」なんてジョークをかますのが鉄板ギャグだったのだとか。

人間の心に迫る内容

この小説が、こんなにもたくさんの人に愛されたのは、
実体験を組み込み、純愛を追いかけつつも、最後は悲劇で終わり、それが人の心の中に深く刻まれたからかもしれません。
 

例えば、日本兵にマンゴスチンを皮ごと食べさせるシーンも小説に含まれているのですが、これは実話とのこと。
作品のモチーフ
 

また、幼いころ見た昔の日本の侍映画で、特に「子連れ狼」の侍が自分の身ではなく子供を守る姿と、侍魂の誠実、忠実な所があり好きだという。
 

また、電車で乗り合わせた日本兵が、自身の娘を思い出してか、座る席がなかった自分を膝にのっけてくれたことがあったとのこと。
 

そして日本兵は町を出歩くこともあり、バンコクで空襲があったのですが、それは日本兵ではなく連合軍によるもので、それで「危害を加えられた」と感じなかったとのこと。
 

これらの体験が、小堀という主人公を本当に実在するかのように書き上げられた要因かもしれません。

作品の余波 

そのリアルさといえば小堀が隠した金を掘り当てようと探したり、小堀が死んだバンコックノイで、駅を取り壊して慰霊碑を建てる話も上がったりしました。
 

小堀に憧れたタイ人女性が、日本人男性と結婚したがったり、チェンマイには「こぼり」という店の屋号が何軒もあるのだとか。
 

また、タイでの日本兵の振る舞いが本当に良かったので、「今でもタイ人は日本人が好きなんだ」とおっしゃっていました。
 

例えば、中村明人タイ駐留司令官は敬虔な仏教徒でしたので、タイに赴任すると早々にワットプラオ王宮へ参拝しています。このことは、タイ人に好感をもたれる行為でした。
 

以上の事が合わさって、小説に反映され小説を読んだタイ人が日本人に好意を持つようになった理由の一つになったのでしょう。

日本人の自縛とそこからの解放

西野さんや小説の話からそれますが、女史は戦時中の英雄、日本兵、戦争について話をすると「日本人は黙り込んでしまうのが残念で、むろん戦争は良くないが、その中でも侍精神、武士道の精神を持った軍人がたくさんいたはずで、彼らからもっと学び、特に忠実、誠実、正義、これらをもっと子供たちに教えたほうが良い」と主張していました。
 

また、「近日日本で水害がありましたが、戦争で負けたが経済大国となった日本なので、今回の水害が悪い物を洗い流したかの如く、また再復興することを願う」と力強く語ってくれました。   (次号へ続く)

2020年11月20日 タイ自由ランド掲載

 

 

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