【なつかしい記事】店主物語り ③「帝国リサーチ」と看板をあげ、日本人向けのリサーチ、トラブル解決等

会社をシーロムのITFに起こしたのは15年前。若干21歳の時だ。「帝国リサーチ」と看板をあげ、日本人向けのリサーチ、トラブル解決等。結婚した日本人男性が支えてくれた。
学校を卒業してすぐのウルサは、活発で頭がきれた。当時はインターネットも発達していないため、タイでの日本人のトラブル等は言ってみればグレーゾーン。表には出ない仕事だから、なかにはあの会社は「あやしい」などと噂をたてられることもあった。

店主物語り ③「帝国リサーチ」と看板をあげ、日本人向けのリサーチ、トラブル解決等

それでも精力的、行動的に動く彼女の姿に、トラブル等の事案は常に舞い込んできた。タイに進出した日本の大手企業が「ニセの商品を作られ、出回っているようで、その真偽を確かめてもらいたい」。また、こちらも日本の大手企業が「社内でタイ人従業員が商品を独自に売りさばいているようだが調査してほしい」。

 

今のように情報がなかなか一般に浸透しづらい時期で、こういうトラブルをたのむところも少なかった。行動派のウルサは、情熱的でもあり、困っている日本人の側に立って、裁判所に行き、入国管理局に行き、日本大使館に行き、タイの警察署にも行った。臆することなく行動するウルサは、こういったトラブルや日本人のビザ、税務、起業等の経験を積み、ひととおり何でも自分で処理できるようになっていた。

順調に仕事をこなし、毎日を過ごすのにも不自由しない。そんな状況の中で、何か満たされないものがある。何だろう。「幸せ」だろうか。そんなことを考えるようになったのは27歳のころ。
学生のころから日本に興味があり、日本の文化なども好きで、日本人に関わる仕事に就きたいとは思っていた。また小さいころからムエタイや空手などが好きな、ボーイッシュな女の子でもあった。

 

日本人に関わる仕事で自分が社長に就き、仕事もお金も不自由はしないが、何か満たされない。そんな27歳のウルサが出会ったのが、合気道だった。ちょうどボランティアでタイ人に教えていた日本人のスクールに加わった。最初の動機は、危険から身を守るためのワザを教わりたい、というものだった。しかし、のめり込んでいくうちに合気道の精神というものは、24時間、自分が生活している間そのもの、と感じるようになった。さらに同じ時期、英訳の「ミヤモトムサシ」を読み、非常に感化される。合気道の精神とも通じるものがあった。

そんな心を持ち仕事に取り組むと、自分も変わった。新しい自分を発見したような。吹っ切れた気持ちで毎日を過ごすことができるようになった。

 

自分が変わればまわりも変わる。それまでは自分を利用しようとする人や足を引っ張る人もうごめいていたが、そういう人はいなくなり、前向きで誠実に自分を助けてくれる人が集まり出した。

日本人をサポートする気持ちは変わらない。若干20歳ちょっとで、カオサンでカンチャーをやっていて捕まった日本人男性。裁判にかけられる直前に、ウルサの元へ話が来て、即座に警察に出向き、解決。「カンチャーを見つかっただけだから本当はたいしたことはないはずですが、それが裁判にかけられ、何年も牢屋に入れられたりする。すぐに私のところに来たから助けられた」と述懐する。その男性はウルサに支払うお金がなく、受け取ったのはラムヤイ2㎏だけだった、と笑う。

理不尽な裁判、ワナにかけられて捕まるなど、日本的な考えでは理解できない展開に巻き込まれる日本人もアトをたたない。そんなときは彼女の出番だ。

「今の時点で欲しいものは何もないし、失うものもない」と言う彼女は強い。権力に立ち向かうことにも何の恐れもない。今は一人身で恋人募集の身ではあるが「性格が強すぎるのかもしれません。すべて自分1人でやっていけるから、もうだんなはいらないですね」。

失うものは何もない、という彼女だが、実際はすでに大きくなった長女を筆頭に子どもが3人いる。15歳だから、そう、彼女が起業したまさにその時の出産だったのだ。

長女は着実に弁護士の道に進んでおり、長男11歳は日本人学校で学ぶ。将来はこの「帝国リサーチ」はきっと子どもたちが運営していくことになるのだろう。その下地を親として着々と積み上げている。

しかし、彼女もまだ36歳。右腕として、裁判、トラブル対策には元将軍大将、そして税務対策には元財務省局長を従えており、まだまだ彼女の活躍は続く。(敬称略)

2010年7月5日 タイ自由ランド掲載

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店主物語り ③「帝国リサーチ」と看板をあげ、日本人向けのリサーチ、トラブル解決等