📘30日で学べる:タイの同性婚 完全ガイド Day5|タイの同性婚運動の歴史

Day5|タイの同性婚運動の歴史
― なぜここまで時間がかかったのか ―
「タイって昔からLGBTQに寛容だったんでしょ?」
そう思っている人は多いかもしれません。
でも実は、
“見えていた”ことと、“法的に認められていた”ことの間には、
長くて深い溝がありました。
Day5では、
タイの同性婚運動がどんな道をたどってきたのかを、
できるだけシンプルに振り返ります。
■ 第1段階|「存在は当たり前、でも権利はゼロ」
20世紀後半のタイでは、
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カトゥーイ(トランス女性)は社会に普通に存在
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芸能界や観光業でも活躍
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差別的な法律は比較的少ない
一見すると「進んでいる」ように見えました。
しかし現実は、
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結婚できない
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家族として認められない
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相続・医療・法的保護はなし
つまり、
社会には存在できるが、制度には存在できない
という状態でした。
■ 第2段階|声は上がるが、政治は動かない
2000年代に入ると、
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人権団体
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法律家
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若い世代の活動家
を中心に、
「同性カップルにも法的保護を」
という声が少しずつ上がり始めます。
ただし当時の政治は、
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クーデターや政権交代が頻発
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経済・治安が優先課題
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家族制度は触れにくいテーマ
同性婚は、
「急がなくていい問題」
として後回しにされ続けました。
■ 第3段階|まずは“妥協案”から
2010年代になると、
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同性婚はまだ無理
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でも何もしないわけにもいかない
という空気が広がります。
そこで出てきたのが、
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市民パートナー制度
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生活パートナー法案
いわば、
「結婚ではないけれど、少し守る」
という妥協案です。
しかし当事者からは、
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権利が中途半端
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国際結婚や相続は未解決
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結局“二級扱い”
という不満も強く残りました。
■ 第4段階|世代交代と社会の変化
2020年代に入ると、大きな変化が起きます。
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若い世代の価値観の変化
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SNSによる可視化
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海外との比較が容易に
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観光・国際評価への影響
「なぜ結婚だけ例外なのか?」
という問いが、
社会全体で共有され始めました。
■ 第5段階|“イメージ国家”から“制度国家”へ
タイは長年、
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LGBTQに優しい国
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多様性のある観光国
というイメージで評価されてきました。
しかし、
イメージだけでは守れない
制度がなければ意味がない
という認識が、
政治の側にも届き始めます。
こうしてようやく、
「結婚として認める」
という決断に至ったのです。
■ Day5のまとめ
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Tensui
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タイの同性婚運動は一夜で進んだわけではない
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「存在の承認」から「権利の承認」まで長い道のり
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妥協案を経て、ようやく平等へ
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社会変化と国際的視点が後押しした
次回 Day6 では、
「なぜタイはアジアで先行できたのか」
をテーマに、他国との違いを見ていきます。 -



