第3章-32 戦前のバンコク 西野順治郎 列伝 48 サーイユット・カートポン大将 その①
初めに
サーイユット・カートポン大将が西野順治郎さんについて、取り上げている書物が見つかりましたので紹介します。
タイ国陸軍司令官を務めた彼は、現在99歳で戦時中に西野さんの存在を認めていたという話で、その内容を以下順追って紹介しましょう。
サーイユット・カートポン大将の紹介
サーイユット・カートポン大将は、1923年3月30日生まれ(99歳)、士官学校出身、奨学金を得てアメリカとオーストラリアで兵学を学び、第二次世界大戦、朝鮮戦争、インドシナ戦争等に従事した後、軍最高司令官をも務めました。
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2人の出会い
彼が西野さんを知り合ったのは、彼が定年を迎える頃(1980年代)、アメリカの友人からタイ初ロータリークラブの設立を頼まれ、彼を会員に招待した時でした。2人の会話の中から戦時中、彼は大使の秘書、通訳として行動していた西野さんを思い出し、同じ時代、場所で行動していた事に「共通意識」が生れました。以来、交流が始まりました。
サーイユット大将が執筆した本
以下の訳文は、西野さんをよく知るサーイユット大将が執筆した本の中の一章を抽出した内容です。(一部割愛)
本のタイトルは、『第2次世界大戦下で日本とタイを見る 1941‐1945年 サーイユット・カートポン大将の記録の公開』。
主に第2次世界大戦でタイに関係する内容となっています。戦時中の日本軍の動きや、タイ人側からみた戦争がどういうものだったのかをも読み取れます。
この本は2007年に出版されましたが、彼は当時83歳でした。
また、内容は、時系列順に戦争中の出来事が書かれ、本の後半に入った終戦頃の話で、彼から見た西野さんは、日タイ間の友好関係に貢献した人と明確に記載されています。
この本自体は、国立図書館、大学図書館等に保管されていますが、市場に出回っておらず、入手困難な状態です。
しかし、士官学校出版社の刊行誌にて、本の内容が掲載され、その一部を入手する事が出来ました。
(以下、西野さんに関する第19章全文を紹介)
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第19章 影の活躍者、西野順治郎
西野順治郎は日タイ関係の修復に努めた歴史的に重要な人物です。
西野順治郎(にしの じゅんじろう)は長くタイに滞在し、とてもタイ人にとって親しみを持ちやすい人物でした。
西野さんの話からタイの新聞社「ザ・ネーション」にインタビュー記事が記載されるほどで、私は彼が戦争中のことを正しく伝えられる人物の内の一人だと思います。
それは、彼は1940年から終戦にかけて在タイ日本国大使館で副領事(著者注:秘書兼通訳官)として就任していたためです。彼は、悪化したタイと日本の関係の回復に大いに貢献していました。
(次回号へ続く)