天丼てんや、タイ国より撤退の巻

──あぁ、サクサクの天ぷらよ、さらばでござる
拙者、この報せを耳にしたとき、あまりの悲しさに箸を落とし申した…。かの「天丼てんや」、ついにタイ国より撤退とのこと。

この十余年、バンコクの町にて、異国の侍や浪人の腹を満たしてきた天丼、もはや味わうこと叶わぬとは、なんとも無念でござる…。思えば、てんやがタイに初めて上陸したは、2013年10月11日のこと。バンナーの地に一号店を構え、サクサクの衣と秘伝のタレで、多くの町人たちを虜にしたのでござる。

その後、国中に広がり、最盛期には十四の陣を張った。されど時代は移ろうもの。コロナの乱や、異国料理の増加といった逆風にさらされ、次第に店を畳むこととなった次第でござる。

そして今、最後の砦となっておる「ターミナル21アソーク店」は8月31日をもって閉店。さらに「サムヤーン・ミットタウン店」も9月5日に幕を下ろすと聞き及ぶ。あぁ、これにて、タイの地にてんやの旗は消えゆくのでござる…。

思えば、汗ばむバンコクの昼下がり、揚げたての天ぷらを頬張り、「これぞ日本の味」と感涙にむせぶ日々…。その喜びは、もはや幻となり申す。

いざさらば、てんや殿。十年の長きにわたり、泰の民と異国の侍たちの腹を満たしてくれた恩、決して忘れはいたさぬ。拙者、最後の一杯、天丼をかき込み、心の中でそっと呟こうぞ──

「さらばでござる、てんや殿。サクサクの衣、永遠に…」

拙者より一言:何かございましたら、歌舞伎風や忍者風にも変身いたしまする。