8月、日本ではお盆で大移動ラッシュ。ニュースの映像で、ホームに人がぎゅうぎゅう詰めになっているのを見ながら、タイに住む日本人は心の中でつぶやきます。
「ふーん、向こうは人間が満員電車で戦ってるのですね。こっちは蚊が満員電車状態だけど…」
タイの8月は雨季のピーク。スコールがザーッと降ると「これで涼しくなる!」と思ったのも束の間、数分後には蒸し風呂状態。湿気に乗って、蚊も小虫も一斉に襲来します。窓を開ければ蚊の乱入、閉めればエアコンで体がだる重。日本人は毎晩、「窓か?冷房か?健康か?」という三択クイズに挑まなければなりません。
夕方、犬の散歩に短パンで出ればさらに地獄。ふくらはぎが蚊のビュッフェ状態に。虫よけスプレーを吹きかけているとはいえ、体のどこかが必ず狙われます。「これ、香水扱いでいいんじゃ…?」と思わず笑ってしまうほど。現地の人はパチンと一発で蚊を仕留め、涼しい顔。日本人だけがキャーキャー騒いでいるのも、8月あるあるです。
そして我が家の田舎暮らしでは、さらに賑やかな現象があります。小さな庭付きの家で、ワンちゃん12ひきと暮らしているのですが、雷が大嫌い。雨が降ると、雷の音に全員が大騒ぎ。玄関を走り回る、ソファに飛び乗る、吠えまくる…そのパニックぶりは、まるで小さな雷対応チームの訓練中。家の中が一気に戦場のようになり、思わず人間も一緒に叫びたくなるほどです。
でも、タイ在住者ならではの嬉しい特典もあります。それは、バンコクの道路がスッキリ空くこと。タイのお盆「サーン・パオ」の期間、地元民は一斉に地方へ帰省するので、普段カオスな渋滞がまるで幻のように消えます。渋滞ゼロのスクンビット通りを走りながら、「ここ、バンコクだよね…?」とちょっと感動する瞬間です。
さらに日本の猛暑ニュースも、夏の定番話題。テレビで「日本は40度」と聞くと、「あっちも地獄、こっちも地獄。でもこっちは蚊付き」と笑い話に。結局、暑さ、湿気、蚊の三重苦に翻弄されながらも、犬たちの騒ぎを見て笑ったり、スコール後の空気の匂いを感じたりして、そんな夏をちょっと愛してしまう自分に気づきます。
タイの8月は、汗と湿気と蚊、そして雷に怯えるワンちゃんたちとの戦い。でも、渋滞のない街を散歩したり、広い庭で犬たちと騒いだりするちょっとした解放感もあり、暑くて湿っぽくて小さな虫に刺されまくる毎日だけど、それも含めて「在住日本人の夏の味わい」なのです。
