探偵物語 こんな依頼がありました 「失踪人」パート⑨


こんな依頼がありました 「失踪人」パート③

(前号からの続き)

「はあ…」
「普通は、最初殆どが失踪したとおっしゃって警察に来られる。けれど、そこには殆どご家庭や学校や…そういった悩みなどの問題から失踪される。まぁ、これは失踪ではなくて家出なのですね。けれど遺書があったとか、誘拐犯から連絡があったなどとなると、これは事件です。要するに刑事事件ですね。ここで初めて警察は捜査に乗り出す。」
「つまり?」私はさらに尋ねた。
「つまり、」担当官は言う。
「今回のケース。事件性が認められない。そうすると警察は家出人の届出を受理して、あとは警察活動しかできないのですよ。」
「警察活動ってのは、何なんです?」
「警察活動というのは、通報があったら駆け付ける。警ら中に不審人物がいたら職質をする。これが警察活動です。」
「つまり、こういう事ですか?」私は言った。
「事件性がない限り…いや、無いかどうかを警察の判断で決めて、ないとすれば、あとは自分から出てくるか、パトロール中に職質して、その人がたまたま捜索願が出ている人だったらばラッキーみたいな?」
「ラッキー…と言われると…。」
「だってそうですよね。じゃあ、遺体で見つかっても?」
「そうですね…通報があって、遺体が発見されたとなると我々が赴く。これも警察活動になりますね。」
「それじゃ、それから司法解剖して、それでもしも事件性があったら捜査って事をですか?」
「その場合は、そうなりますね。」
…なんて事だ。それじゃ見つかるわけがない。無論、依頼者家族も同様に驚いていた。
私たちは警察署を出て車に乗った。とにかく驚いた。
『捜索願』は存在しない??
じゃあ、何でみんな捜索願って言ってるのだろう? 鼻から事件性がなければ職質などの単なる警察活動にラッキーを委ねるしかない。
これから失踪する皆さんへのマニュアルです。
『失踪する前に、ちゃんと残そう危険シグナル。残された家族に最後の孝行。』 …アホか…
依頼者家族から聴き取った、彼女の日々の行動は、彼女が失踪する理由を明確に示すものを見つける事ができなかったが、唯一、引っかかる行動が彼女の失踪当日の朝の会話だった。
彼女が長女の長男を引き取って養子にしていたという事 は以前話した。長女夫婦の幼児虐待が理由であったが、その長男も小学校一年生になっていた。
この日の朝、長男がお婆ちゃんに勉強を見てもらっている間、彼女は黙って同じリビングのテーブルに座り、その様子を見ていたという。
これは、お婆ちゃん談。
この時、彼女は外出する旨を家族に話しており、その荷物(鞄)は玄関に置いてあったそうだ。
鞄は、家族の記憶によればトートバッグのような鞄だったとか。彼女は時間を気にしている様子で、しばらく長男の勉強を同じテーブルで傍から見ていたが、しばらくたって、「そろそろ行く。」というような事を行って、玄関先に向かったという。
この時、長男の肩に手を置き、
「いいかい。お婆ちゃんのいう事をちゃんと聞くんだよ。」と言ったという。これは、直接聞いたわけではないが、長男談だそうである。
そして、出がけ間際にお婆ちゃんが、「何時頃に帰って来るの?」と聞いたそうだが、本人は何か苛立っている様子で、「そんな事、行ってみなければわからないわよ!」と強い剣幕であったという。これはお婆ちゃん談。
(次号へ続く)

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2019年8月20日 タイ自由ランド掲載

 

 


 

コメント

  1. 東京国際調査事務所の過去の事件簿的連載ですが、これまでは何となく気になる展開が続いていましたが、捜索願についての事実に驚きました。警察への捜索願というものは存在しないというのは衝撃です。