探偵事務所にこんな依頼がありました 「失踪人」パート①


久々のシリーズ最新作です。この案件は公開するまでに随分と悩みました。私が探偵という職業を始めて最後まで…いや、未だにすっきりしない依頼だったからです。

あれから数年経って、もういちど整理してみたくなったのと、そろそろ熱りも冷めた頃合いだろうと思い、公開する事にしました。

ある年の2月。まだ寒い真冬の事でした…

「いやぁ~、ホントに参っちゃったよ。」

60歳くらいの男性が、私の事務所のソファーに半ば踏ん反り返って言うのです。

「突然、いなくなっちゃってさ。警察に捜索願いは出したんだけど…どこいっちゃったのか、帰って来ないんだよね。」

聞けば、2週間程前に奥さんが失踪したという。警察には『捜索願い」を出したのだというが…。
この『捜索願い」に関しては、私も後にその真実を知る事になるが、これを『出して』も見つからないから私のところに依頼に来たのだと言う。

依頼者によれば、奥さんは自身の身分を証明できる全ての物を自宅に残して行っている。免許証、保険証、クレジットカード、銀行キャッシュカード、携帯電話、診察券…等、さらに現金。しかも不思議な事に、それらを全てカバンに一まとめにして置いてあったのだそうだ。

「自殺でもしないかってさ…」

依頼者は言う。

「いなくなったって、まぁ…仕方がないけど、おばあちゃんが心配してよぉ」

「おばあちゃん?」

「そう。妻の母親。」

「ああ。なるほど。」

私は言ったものの、この時、この失踪人の旦那である依頼者に何か謂れのない違和感を感じた事を憶えている。

まず何より妻が失踪した事について『悲壮感』が感じられなかった。

ともかく、依頼者が言うように、前記の所持品を置いて行った事を考えると、確かに覚悟の失踪とも想像できる。

「依頼されますか?」

「ところで、費用はいくら位?」

「当面の経費など、着手金として30万ほど…あとは成功報酬で30万円は最低必要になると思いますが、調査の過程によっては経費が増える事もあるかも知れません。」

「ちょっと待って。」

依頼者は言って携帯電話で電話をかけ始めた。

「うん、そう。いま探偵さんのところにね…。とりあえず30万だってさ。うん?そうそう。いい?あ、そう。わかりました。ハイ…ハイ。」

電話を切ると言った。

「とりあえず、いいって。」

「はい?…と言いますと?」

「だからさ。」依頼者は言う。

「おばあちゃんがお金を出すからさ、いま30万だけど大丈夫かって言ったら、いいって言うから依頼します。」

もしかしたら、私が今でもスッキリしないのは、この依頼者に対してだったのかも知れない。

けれど、この後、調査をすればするほど、益々、スッキリしない事だらけになっていった。

(次号に続く)

2019年5月5日 タイ自由ランド掲載

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