【タイの田舎の小さな家から】2025年7月2日最新ニュース
写真: バンコクで撮影(2025年 ロイター/Athit Perawongmetha)
タイの憲法裁判所は7月1日、カンボジアとの国境問題への対応を巡り、ペートンタン首相の職務を一時停止するよう命じました。この決定により、タイの政治情勢はさらなる混乱期に突入することとなりました。
政治危機の背景
今回の問題の発端は、5月末以降にタイとカンボジア間で深まった国境問題への対応です。ペートンタン首相がカンボジアのフン・セン前首相と行った電話会談の音声が流出し、その中で自国の軍を批判する発言をしていたことが判明しました。
上院議員らは、首相の発言が憲法で定められた倫理規定に違反するとして、憲法裁判所に首相の解任を求める請願書を提出。憲法裁判所はこれを受理し、審理期間中の職務停止を命じました。
今後の政権運営
職務停止期間中は、ジュンルンルアンキット副首相が暫定首相を務める見通しです。ペートンタン首相は直前に内閣改造を行い、文化相も兼務していたため、内閣にとどまる可能性があります。
6月28日には首相の辞任を求める大規模なデモも開催されており、政権への圧力が高まっています。また、与党第2党が連立政権から離脱するなど、政治的な結束にも影が差しています。
ペートンタン首相のコメント: 「裁判所の決定を受け入れる。不快に感じた方々におわびする。私の行動は真に国のためを思ってのことだった」
5月の工業生産2%増、自動車部門が牽引
タイ工業省工業経済事務局(OIE)の発表によると、2025年5月の鉱工業生産指数は前年同月比1.9%上昇し、2か月連続のプラス成長を記録しました。特に自動車部門の好調が全体を押し上げる結果となりました。
部門別の動向
好調部門
- • 自動車: 12.9%増(EV等電動車が牽引)
- • 食品: 5.6%増(パーム油・砂糖が好調)
- • 電子機器: 4.8%増(3か月連続プラス)
- • ベースメタル: 5.0%増
低調部門
- • エアコン・圧縮機: 10.6%減
- • 飲料: 9.6%減(6か月連続減)
- • 観光関連サービス業
自動車産業の復調
自動車部門では、電気自動車(EV)が373.0%増、プラグインハイブリッド車(PHV)が260.9%増と大幅な伸びを記録。国内販売の拡大と輸出増加が要因となっています。製造業設備稼働率も61.1%と前年同月から1.1ポイント上昇しました。
観光部門は減速
一方で、タイ中央銀行の発表によると、5月の観光部門は収入と外国人観光客数がともに減少し、特に長距離旅行者の減少が目立ちました。これにより、輸出の急増にもかかわらず、経済成長は前月から鈍化したとされています。
高度人材、10産業で108万人必要との予測
国家高等教育・科学・研究・イノベーション政策委員会(NXPO)とIRISコンサルティングの共同調査により、タイでは2025~29年に10の主要産業で108万人の高度人材が必要になることが明らかになりました。
重点産業での人材需要
デジタル技術、再生可能エネルギー、バイオテクノロジー、先端製造業などの分野で特に高度な専門性を持つ人材の確保が急務となっています。
政府は教育制度の改革と産学連携の強化を通じて、この人材ギャップの解消を目指すとしています。
市場分析と今後の展望
アナリストの見解
現在のタイは政治的不安定さと経済的成長が同時に進行する複雑な状況にあります。製造業の回復と輸出の増加は好材料である一方、観光業の低迷と政治危機が成長の足かせとなる可能性があります。今後数か月間の政治情勢の安定化が、経済成長の持続性を左右する重要な要因となるでしょう。
参考資料・出典