探偵物語 こんな依頼がありました 「失踪人」パート⑪


こんな依頼がありました 「失踪人」パート③

(前号からの続き)
私のアイパッドにこの案件のレポートが残されている。
よくは憶えていないのだが、レポートを見ていると警察に訴えかけるような書き方をしているようにも思える。
いま読んでみて致命的なのは公平さに欠ける内容であるという事だ。どうやっても自殺ではないのでは…という記録の仕方だ。それでも、依頼者家族のおかげで目先の方向は変えられていった。
俳優の◯◯氏はドラマなどで観る事がある。その◯◯氏が、『姐さん』と呼んだという失踪人。何とかその事実を確認できないだろうかと考えていた。
私たちは警察署の帰りにお弁当屋に寄って、私は依頼者が御馳走してくれるというのを断り、そのまま一緒に依頼者宅に戻った。
依頼者家族がお弁当を食べている間、リビングのソファに腰掛けて考えていたが、実はアテがないわけでもなかった。私の知り合いに女優さんがいる。その女優さんが以前、◯◯氏と共演していた事を知っていたからだ。
とはいえ、こんな事をお願いできるだろうか? 「◯◯さんに、◯◯連合の会合に出ましたか?」って?
仮に◯◯氏が「ええ、出ましたよ。」と言ったとして、「その時、◯◯さんという女性がいて、その女性に姐さんと言って挨拶しましたか?」 などと聞いてくれと?
そんな事を頼めるわけはない。それでも、私が直接取材ができれば一番良いのだから、とりあえず聞いみよう。そう思って、すぐに電話をかけた。
彼女は気持ちよく応対してくれたが、◯◯氏と共演をしたのは、もうかれこれ15年位前の話だ。彼女も今は特に交流はないとの事で、それ以上の進展はなかった。
やっぱり、もう一度、家族のヒアリング内容に目をやった。
単独での失踪…そして免許証やあらゆる物を置いて行き、自殺の可能性を考えながらも、ヒアリングの内容ではその兆しさえも見つけられない。
そんな中、依頼者や実次女などから、実は男が居て半ば駆け落ちのように家族を捨てて出て行ったのでは…という話が持ち上がる。確かにヒアリングの内容を見直してみると、単独ではなかったのかも…と思わざるを得ない内容もある。
養子にした孫に、『古い友人に会う』と言っていたという事や、その何日か前にも、母親(おばあちゃん)に、『人と会う』と言っていたという話もあるのだ。
そして追い討ちをかけるように依頼者が言った。
「妻の学生時代の同級生で…男の人なのですがね、車好きで、よく妻が乗せてくれたなんて事を言っていた人がいるんです。」
「車好き?」私は言った。
「それって、俳優の◯◯さんとは別の?」
「全然別の人です。確か年賀状とか来ていましたから連絡先はわかると思います。」
…困った傾向だと思った。今度は、その男が怪しいと言い出した。その男が匿っているのではと。考えれば考えるほど頭が痛くなってくる。
それなのに…。
「その男…」依頼者は言った。
「調べてもらえませんか?」
(次号へ続く)

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2019年9月20日 タイ自由ランド掲載