探偵物語 こんな依頼がありました 「失踪人」パート⑩


こんな依頼がありました 「失踪人」パート③

(前号からの続き)

さて、ここで疑問なのだが、彼女は時間を気にしていた。◯◯市に向かうのに、特急電車に乗るためか、その時間を気にしていたとも考えられるが、その◯◯市は確かに地方の観光地なのだが、比較的、頻繁に電車は出てるし、特急に乗らなくても、そんなに時間がかかるようなところでもない。
自殺をするために覚悟の家出だとしても、そんなに急いで行く必要があっただろうか?
それから、覚悟の失踪に特急電車の切符を予め購入していたのだろうか? この時点で、失踪するつもりであったとしても、自殺をするには冷静過ぎはしないだろうか? 何か思いつめて、覚悟の失踪を計画してたとして…私が家族の聴き取りをした記録には、その前兆さえ窺えない。
とはいえ、本人の心の中は本人にしかわからないから、こればかりは聴き取りの内容で安易に判断する事は難しい。
『…行ってみなければわからないわよ!』という彼女の捨て台詞とも取れるセリフ…。これは、何を意味しているのだろう? 帰って来れれば、帰ってくるつもりであったのか…
ただ、ただならぬ状況があって、帰って来たくても、帰って来れない可能性があった何かがあったのか? そう…養子にした長男には、「古い友人に会いに行く。」と言っていたそうだ。
これは、単に長男を安心させるために伝えた目的なのか…
それとも、本当に会う予定の『誰か』が存在したのか?
いずれにしても、彼女はその日を最後に帰宅する事はなかった。
「行かないって言ってたのだけど、」依頼者である夫が言った。
「いやね…実は昔の暴走族関係の同窓会みないな案内が来てたらしくて、『行ってもいいか?』みたいな事を私に妻が言ったので、私は行って欲しくないって言ったんですよ。
そしたら、『行かない。』って妻は言ってたのだけど…』
「彼女は実際は行ったわけですね?」
「あとで分かったんです。」実次女が言った。「ある時、母が実は行ったんだ、って私に言ったんです。」
「そうらしいんですよ。」と依頼者。

「で、河村さん知ってます?」実次女が続けた。
「その◯◯連合って、ほら、有名な俳優さん。もと、◯◯連合の関係の暴走族の総長だったという…」
「ああ…◯◯さんですよね。有名な話ですから知ってます。」

「わたし、その人のプロダクションのホームページから、メールで彼にコンタクトを取ってみようかと思うんです。」
「え?やめた方が…」私は彼女を制した。
「だって、彼はもう関係ないでしょう?今は立派な俳優だし、演技にも定評がある。」
「でも、来ていたらしいですよ。」
「どこに?」
「その会合に。」
「え?…まさか?」
「いいえ。」実次女は言った。
「母が言ってましたから。久々にその会合で顔を合わせて、彼の方から母のところに来て挨拶したらしいですよ。」
「挨拶?」
「ええ。」と実次女は言ったが少し考え、そして言った。
「彼が、『姐さん、ご無沙汰しております。』って。」
「………。」
(次号へ続く)

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2019年9月5日 タイ自由ランド掲載