探偵物語 こんな依頼がありました 「失踪人」パート④


こんな依頼がありました 「失踪人」パート③

(前号からの続き)
果たせるかな。それからというもの、商店街を対象者の写真を見せて歩き、聞き込みをした。有力な情報は得られない。

時々、「何か、見たことあるね…この人…。」などという人もいたが信憑性に欠け、確かな情報はない。

バス会社にも行った。タクシー会社にも行き、タクシー1台、1台聞いて回ったりもした。

でもダメだった…。

「こりゃぁ…難しいですね…いちいち乗った人なんか、運転手も憶えているはずがないですよ。」

H氏のいう事ももっともだ。

「待てよ…。」

私はハタと気がついた。

「もしかして、お寺とかの観光地を最後に訪れていないですかね。」

「お寺か…あり得るかもですね。」

「そうですよ。」私は言った。

「観光地に行ったら、ほら、よく記念撮影とかやっている業者がいるでしょう?」

「記念撮影なんかしますかね?」

「違いますよ。自分が記念撮影なんかしないけど、後ろを歩いていたり、そういう風に写ってるかも知れない!」

「はぁ…なるほど。」H氏は言った。

「でも、確率は低くないですか?」

「もともと、確率の問題でここに来たわけだから、全ては可能性の問題ですよ。行きましょう‼」

そして、私たちは有名な観光地である、某寺院に来た。

見て驚いた。

「ほら。やっぱり。」私はH氏に言った。

「これなら、彼女がここに立ち寄っていれば写真に写っててもおかしくはない。」

某寺院の境内には、カップルや家族連れなど多くの観光客がいて、業者が個別で写真を撮ったりしている。

「すみません、ちょっとお話を…」

私は写真業者に奥さんの写真を見せて言った。

「この女性、見た事がないですかね?」

この業者さんが、また人の良い方で本人が来たであろう日から今まで撮影した写真を片っ端から調べてくれた。

最近、『個人情報』という壁が調査を難航させる原因にもなっている。

それは当然の事で、国民ひとりひとりの個人情報が悪用される事件が相次いでいるのだから。

けど、今回の調査で感じたのは、人の生命や財産に関わる問題には、役人よりも街の人たちの方が個人情報について柔軟だ。

話がそれるが、警察も鉄道会社も、みな責任を負いたくないのだ。
確かに探偵は届出制であって免許制ではない。だから、その人間が信用できるかと言えば難しい問題ではあると思う。

大切なのは、今回、寺院の写真業者や町の商店街の人たちのように、しっかりとした見識を持つべきだ。
例えば、本当に届出をしている業者なのか警察に問い合わせればわかる事で、その上でその業者が知ろうとしている事が、本当に人の生命に関わる問題であるのか?
要するに現代人は、こういう事を自身で判断できる能力に欠ける。だから詐欺にひっかかったりするのである。

自身では判断できないから、そして自身が責任を負いたくないから、何でもかんでも個人情報を盾に逃げようとするしかない。

写真業者は、朝までかかって本人の写真と、今まで撮影した人物らや、その背後に写っている人物さえも調べてくれたそうだ。

本当に感謝の言葉も見つからなかった。それでも、本人らしき人物さえも確認する事はできなかった…。
私は丁重にお礼をして、また何か情報があったら連絡を頂けるように私の名刺を渡して寺院を後にした。
「◯◯市には来ていなかったんですかね…。」

H氏がそういうのも仕方がない。

…私だって、そろそろ自信がなくなってきているところだったのだから。(次号へ続く)

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2019年6月5日 タイ自由ランド掲載

 

 


 

コメント

  1. サスペンス劇場のドラマを見ているみたいな緊張感があって好きな連載です。この奥さんはどこをどう移動しているのか、旦那さんは淡々としすぎじゃないか?とかいろいろ妄想が膨らみます。